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防備録:第51回ベネチアビエンナーレカタログ翻訳

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2005年にとある芸術施設の図書館のために翻訳したもの。
この時のビエンナーレはマリア・デ・コラールとローザ・マルティネスの初女性ディレクターでしたが、展示方法が大好きなテート・モダンみたいなテーマごと各世代の作品が一緒に展示されてたりしていてとても好評だったと思います。

mixiからの記録引上げ作業の一環として、発掘されたものを保存。当時のmixiはほんとに身内だけでやっていたので、翻訳でつまづいたりした時のお助けSNSとして大変有効じゃった。。しかし、翻訳ばかりしていた頃の私の日記は「3日3晩リ〇イン漬けで」だの「・・・(まだ生きてる) ほんとにこのままでは打ち首カウントダウンです!!」だの、「家の中でエコノミー症候群になりそうです」だの、不健康極まりなくて読んでるだけで肩が凝る!私はライブで外に出ることによってかなり健康的な人間になったと思います。

で、マリア・デ・コラールとローザ・マルティネス他いろんな人の文章を翻訳したのですが、いま手元にないのでこれだけでも。この翻訳版は施設の記録用途で書籍化されていないので。
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Fabrizio Plessi(ファブリツィオ・プレッシ)
Mare Verticale(『垂直な海』)
ベネチアビエンナーレとイタリア外務省による特別展

淡々とした映像が与える、安心ではなく疑心。それこそが、プレッシのビデオを用いたマニエリスト的手法の骨頂である。彼は、芸術は世の中の前線にあらず、故に芸術によってリアリティーがあがなわれることはないということに自覚的だ。然るに彼はイメージの単純再生産を続ける。時間のスピードを緩め、フレームを引きのばし、ネオ・マニエリストの最も特徴的な作業といえる、奇妙に言葉が転位されたシリーズ作品を創る。
このテレビを水平に並べる手法からは、作家が純粋にその媒体が持つ文法通りの役割を信用してはおらず、怒れる知識人であり、情緒的で表現力豊かな、相対的で疑い深い人物であることがうかがえる。
プレッシのsuperficialism(表層主義)では、一貫して言語的ツールの使用が認められるが、それが無くとも彼の複雑な芸術の中には常に「歪められた結果」が潜んでいる。
現代アートは視線の操作に自覚的であるから、その複製可能な外観において常に再生産が起こっていることにも自覚的である。「深部は隠さねばならない。何処に?その表面に」。ホフマンスタールのこの発言はプレッシの手法を象徴している。彼は媒体の規則性に従いながらも、スクリーン上の薄い光沢に濾過されてインスタレーションの内部へと流れ込む「実在しない何か」を見せるのだ。プレッシはまた、このバロックの祭典と贅沢な景色という説得力を味方に付けることで、本作品に彼自身の想像力のメーターさえも振り切れるほど、多様な意味付けの可能性を与えている。
また当然、説得力はそのエレクトロニクな光景、自動装置という熟視を誘引する機能からももたらされている。
プレッシは無声の静止画の世界で小難しいノイズを扱うのではなく、コンテストを受けてたち、音のついた動的で近づきやすい作品に仕立てている。また一方で、イメージが映写される表面の外観を競うこのような機械装置が、気づきや精神的試練の過程をもたらす事からは、バロック的性質が取り戻されているともいえるだろう。それらは外へではなく内面へと向かっている。この意味で、プレッシはイタリアの作家だ。つまり、彼は人生にゆとりや情熱といった要素を与えるための完成された、しかし活き活きと動的なフォルムを採用するのである。そうした性質は必然的に、自然と人工、熱いものと冷たいものの緊張を調和させる。全てがデザインに呼応しつつ、カオスの原理に支えられているという、広大な夢の世界がインスタレーションを支配している。
内面では、鑑賞者は自己の学習能力や運動感覚を働かせ、作品の隅々をなぞってイメージを膨らませ、知覚を増幅させ、全てが対照的な正面主義の外観を抜けだし、円の定理に従った時空間の住人となる。
プレッシの作品は、感性の接線を移動しながら、表現手段の構造的な冷たさを別の温度にカーブさせる。それこそ設計とその枠からはみ出たものの間で遊ぶファンタジーといえるだろう。結果、より素晴らしい空想の植物に気づく可能性を見いだすメカニズムを完成させるような、精巧で高度な緻密さを持っている。
プレッシの作品は歴史的アヴァンギャルドの構造センスと、現代的な精密な分離的感覚を兼ね備えているといえるだろう。

Achille Bonito Oliva
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by soundquest | 2013-10-08 08:05 | 翻訳/ translation | Comments(0)